「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

 

「2024年、アフターコロナのエトセトラを報告?します 10月篇」

 

 清八でございます。毎月、「食」に関する書籍・漫画・DVDなど、主に中古品を探しては買い求め、読んだり、観たりして学習しております。それでは、10月分を報告させていただきます。浜松三ツ星会の10月見学会レポートもあります。

 

■塚本康浩著「ダチョウはアホだが役に立つ」幻冬舎文庫(2024.5.25)中古本

 隠れたベストセラー(失礼致しました)というのが時々ありますが、この一冊もそうだったんです。CBCのラジオ番組で紹介されていて、面白そうだったので古書店で即、購入しました。京都府立大学の学長、塚本教授の27年以上にわたる研究成果からダチョウの生態から抗体の最新研究までを面白おかしく説明してくれた一冊でした。

 18~21頁「ダチョウはアホだ」から始まります。「ダチョウという鳥は、ホンマにアホです。どのくらいアホかというと、自分の家族もわからんのです。‥A家とB家のダチョウが出会ったとき、何かの拍子にパニックになると、騒ぎが収まった後、A家とB家のメンバーはごちゃ混ぜになってしまう。一家のメンバーの数が変わっていても誰も気づかない。‥」

 25~28頁「最大の特徴は鈍感さと、類いまれな回復力」では、驚きの回復力が説明されています。「‥ケガをすると、傷口をふさごうとして細胞が傷口のまわりで動き始めます。ダチョウの場合、その動きがごっつ速いわけです。だから大ケガをしても、カラスに尻の肉を食われても、驚異的な速度で回復するんですね。傷口から感染症に罹ることもないのは、免疫力が並外れて高いからでしょう。それだけ抗体を作る能力が高いとも言えます。‥」

 Amazonで「ダチョウ抗体」と検索すると、いろいろ出てきます。その理由がわかりました。(画像①)

 


(画像①ダチョウはアホだが役に立つ)

 

■椎名誠著「活字のサーカス上・上」小学館文庫(2024.7.10)中古本

 上巻は、1987年10月に刊行された「活字のサーカスー面白本大追跡」(岩波新書)と1998年10月に刊行された「活字博物誌」(岩波新書)の文庫化でした。下巻は、2003年7月に刊行された「活字の海に寝ころんで」(岩波新書)と2010年1月に刊行された「活字たんけん隊―めざせ、面白本の大海」(岩波新書)の文庫化でした。

 椎名誠の旅行記には必ずと言っていいほど、「醤油と海苔とかつおぶし」が登場する。テント泊の自炊にしても辺境の地での宿、食材にまったく変化のない日々の食事などに登場している。下巻の72~83頁の「黄金の食味トライアングル」に詳しく書かれている。

 「‥以前、南米をテントと自炊で旅行していた時に、夕食の支度のためにかつおぶしを削っていると、同行しているインディオが実に珍しそうに目を見張り、『それは何の木か?』と聞いた。たしかにかつおぶしの知識のまったくない外国人からみたら、あれは木以外の何物でもないだろう。炊事担当の冗談好きの仲間が『これは味の木といって日本だけに生える素晴らしい木で、こうして削って煮るとうまいスープができるのだ』と言ったら、タネあかしをするまでしばらく本気で信じていた。」

 「‥鮭の遡上してくるアラスカの海べりでキャンプしていた時、この鮭の切り身とイクラとかつおぶしと醤油をできたてあつあつのゴハンにまんべんなくまぜて、海苔の手まきで食ったときのヨロコビを忘れることはできない。あれはわがキャンプ料理史のダントツ・ベスト1の味であった。」(画像②、③)

 


(画像②活字のサーカス)

 


(画像③活字のサーカス)

 

 

■池波正太郎著「江戸前通の歳時記」集英社文庫(2017.4.17) 中古本

 1997年7月に角川春樹事務所から刊行された「江戸前植物誌」(ランティエ叢書)を改題、再編集して文庫化されてものでした。

「四章 通のたしなみ」の162頁に「‥(うまく食べるために板前や料理人がそういうふうにしているものを、われわれの場合どうしたらいいのかわからないものだから、せっかくの味を駄目にしてしまうんですね‥‥)たとえば『吉兆』へ行ったとする。そうすると椀盛りというものが出るだろう。煮ものというよりも、蓋のついた塗りもののお椀で一見吸いもののようなんだけれどもね。吸いものにしろ椀盛りにしろ、お椀のものが来たらすぐそいつは食べちまうことだね。いい料理屋の場合はもう料理人が泣いちゃうわけですよ。熱いものはすぐ食べなきゃ。‥」

 もう40年位前になるのだろうけど、正月休みにドイツへ旅行して、石畳が凍っているノイシュヴァンシュタイン城に入ったことがありました。当時の宴会場と厨房を見学出来ました。当然、電気もガスも無い時代だから、竃です。1880年代とはいえ、熱いものを熱いままテーブルに置くのはたいへんだったろう、と思ったものです。

 169頁に「ビールを注ぎ足すのは、愚の骨頂」という項目があります。「‥ビールというのはね、料理屋の仲居でもそうだけど、本当の料理屋でない限り、まだ残っているうちに注ぎ足してしまう。これは愚の骨頂で、一番ビールをまずくする飲み方なんだよ。ビールというのは成分がある程度飛んじゃうわけですよ、時間がたつと。そこへ新しい成分を入れるでしょう。せっかくの新しいあれがまずくなっちゃうんだよ。‥」

 もう何十年も前だけど、何かの宴会で「ビールは自分で注いだほうがいいですよ」と言って、新しいビール瓶を置いたら、怒られたの、怒られたの。「気が利かない」という事だったようです。(画像④)

 


(画像④江戸前通の歳時記)

 

 

■遠藤哲夫著「大衆食堂パラダイス」ちくま文庫(2011.9.10)中古本

 1943年新潟県六日町(現・南魚沼市)出身の著者が故郷の望郷食である「もち雑炊」の紹介から始まり、上京後の都内、国内の大衆食堂のルポルタージュ、そして大衆食堂の研究、公衆食堂の研究と近代の食堂文化の集大成でした。

 327頁に「大正期の公衆食堂のメニュー」がありました。「‥1925(大正14)年東京市社会局発行『東京市設社会事業一覧』にあった、『東京市公衆食堂』のメニューだ。ここにパン、ミルク、コーヒーがあるのだ。

 定食 朝10銭、昼15銭、夕15銭
 うどん 種物15銭、普通10銭
 パン ジャムバター付半斤8銭
 ミルク 牛乳一合7銭
 コーヒー 5銭

 331頁の「拡散する大衆食空間」には、「‥戦後の大衆食堂、つまり米飯の販売が自由になってからの昭和30年代であるが、そこには、ミルクやパンやコーヒーはおろか、ビフテキ、ポークソティー、トンカツ、スパゲティなどがあった。もちろん、サバ味噌煮や納豆や豚汁や刺身や野菜炒めもあった。牛丼も天丼もラーメンも大衆食堂で食べるものだった。そのころ大衆食堂にあって消えていったメニューの多くは、普通の飲食から消えたのではない。大衆食堂のメニューやサービスを、それぞれ洗練させながら専門の業態が成長したから、そういうものを大衆食堂で利用する人がいなくなっただけなのだ。というわけで、いま、なぜか大衆食堂のイメージてという昔ながらの『和』になってしまう。『和』とはいえ、戦前に普及した『洋』は含まれている。そして今日の大衆食堂チェーンの時代になると、戦後に普及した『洋』も含まれる。しかし『和』のイメージだし、実際に肉料理はあるがバターをコッテリつかった料理はほとんどない。つまりそれが、近代日本食の普通の姿である‥」(画像⑤)

 


(画像⑤大衆食堂パラダイス)

 

 

■「美食家ダリのレストラン」スペイン映画 (2024/8/16)

 10月19日、浜松市シネマイーラで観てきました。土曜日の9時50分上映で観客14 人でした。1974年、フランコ政権末期のスペイン、バルセロナを追われた料理人フェルナンドとアルベルトの兄弟は、友人フランソワの伝手でサルバドール・ダリの住んでいる海辺の街カダケスにたどり着く。その地には、魅力的な海洋生物学者のロラと、ダリを崇拝するレストラン「シュルレアル」オーナーデアル父ジュールズがいて、というイントロダクション。ダリの時代に、エル・ブリのシェフが存在していたら?という闘争あり、恋愛あり、ダリ愛あり、美食ありのカオスなドタバタ劇でしたが、ラテン系のノリで展開される「愛」のドラマでした。調理場面が少なくて残念だったけど、「エル・ブリの秘密―世界一予約のとれないレストラン」を観ていたので充分理解出来ました。(画像⑥)

 

 


(画像⑥美食家ダリのレストラン)

 

 10月29日(火)は、浜松三ツ星会の勉強会でした。浜松市中央区上西町の「浜松市食肉地方卸売市場」の見学会でした。午前中は豚の屠殺解体作業の工程説明をお聞きし、現場での見学をさせていただきました。午後からは、枝肉のせりを見学できました。ただし、場内撮影禁止!のため、昼食でいただいたムーラン特製豪華お弁当の画像です。

 担当課長さんからは、夏休み期間中の親子見学会では、子供さんも保護者の方も真摯に見学され、「いのちをいただく」ことを受け止めていだだけたと、語られていました。

 なお、この施設は2026年末で廃止されるので、見学はお早めにという事でした。ありがとうございました。(画像⑦、⑧)

 


(画像⑦浜松三ツ星会の勉強会)

 

 


(画像⑧ムーラン特製豪華お弁当)

 

2024.11.25 清八



38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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