「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

 

「2024年、アフターコロナのエトセトラを報告?します 9月篇」

 

 清八でございます。毎月、「食」に関する書籍・漫画・DVDなど、主に中古品を探しては買い求め、読んだり、観たりして学習しております。それでは、9月分を報告させていただきます。浜松三ツ星会の9月見学会レポートもあります。

 

■池波正太郎著「食べ物日記 鬼平誕生のころ」文藝春秋(2009.3.15)中古本

 以前、何度か書かせていただきましたが、私は池波正太郎ファンの一人です。文庫本で出版された90%は購入、読ませていただき、永久保管してあります。この単行本は、没後に公開された1968年(昭和43年)1月1日から同年12月31日の一年間、365日「食事の記録」だけの日記でした。

 23頁「‥1月23日(火曜)晴 朝、西下 河道屋『なべやきうどん』〔夜〕東洋亭、ビーフカツレツ、サラダ、めし、ハイボール、コーヒー 京都にて 映画『007カジノロワイヤル』」

 55頁「‥4月8日(月曜)晴〔昼〕トマトライス、コーヒー〔夜〕(新評社長宴、赤坂『中川』)・ツキダシ(白和え、卵どうふ、もう一品)・わんもり・しんじょ揚(レモンソース)・あわび、魚、野菜、むしやき・カニ(しょうがじょうゆ)・一品・オカラの如きもの・赤だし・めし・やきのり・つけもの・菓子・グレープフルーツ」

 と、このように365日の食事内容、観劇、鑑賞映画などが綴られていました。

 170~183頁には、静岡方面に取材旅行した時のことを「駿河路」と題してエッセイを書かれている。昭和43年に開通した東名高速道路について、「‥先の『名神高速道路』といい、今度の『東名』といい、戦後のわが国の路線建設技術のすばらしさは瞠目すべきものがある。それでいて、人間の歩む道は日毎にせばめられ、車輛に圧迫された人の血が間断なくながれつづける。日本の現代こそは種々の公害を含めて、未曾有の『殺人時代』といってよい。この『殺人時代』に、先ず政治家が麻痺し、国民がそれにならいつつある。人間の機能は、まだ原始のころからの形態から少しもぬけ出してはいない。新鮮な水と空気を必要とし、食べてねむり、排泄し、交接し、子を生み、育てるという古来の形態から一歩もぬけ出してはいないのである。人間が住まぬ国土は無い。ならば人間が最小限に必要とするものをあたえるのが国家であろう。‥」

 昭和43年のエッセイです。今の議員、元・議員たちは、この内容を理解できるのでしょうか?(画像①)

 


(画像①食べ物日記)

 

■アイラップ愛好会著「アイラップレシピ」山と渓谷社(2024.8.1発行)新刊本

 9月1日は「防災の日」でした。私が生まれ暮らしている湖西市新居町では曜日に関係なく、この日に町内・市内一斉に防災訓練が計画され実施されています。そのため、防災及び自治会の役員に選ばれると、その日、有給対応の方が多いです。
 この日、コロナ禍前には、岩谷マテリアル株式会社の「アイラップ」が防災時の調理用品として紹介されていました。最近、テレビ番組で取り上げられる機会が多く、再び、注目されてきました。この本は「日常使い」「災害時」「キャンプ」と三つのシーンに展開されていて、レパートリーが簡単に増えていくレシピ集でした。

 災害時レシピの86頁に「ひじきの煮物」がありました。アイラップの袋内に、乾燥ひじき(乾燥野菜入り)15g、水100ml、白だしを大匙三杯入れて、空気を抜き袋の上部を結びます。鍋に袋を入れて10分湯煎したら火を止め、30分ほど余熱処理すると出来上がりというレシピでした。

 キャンプや山歩きでの一品レシピもたくさん紹介されているので、おとくな一冊だと思いますよ。(画像②)

 


(画像②アイラップレシピ)

 

 

■「おとなの週末 10月号」講談社(2024.9.13発行)新刊本

 今号の特集記事の一つが「いやしの森カフェ」でした。

 88~90頁に、長野県長野市戸隠の「パイプのけむり」と信濃町の「カフェらんぷ屋」さんが紹介されていました。

 1983年の創業の3年前から、私は友人たちと合併前の戸隠村内で毎年8月にキャンプ生活をしておりました。当時の戸隠村にはお蕎麦屋さんは、たくさんありましたが、喫茶はペンション、ロッジの食堂内、ゲレンデのリフト乗り場近くでの営業のみでした。それが、83年の8月キャンプに行った時、この「パイけむ」さんの噂を聞き、探して、探して、探して伺いました。ナビも無い、観光パンフにも掲載されていない時代でした。ワインがあり、ドイツやオランダのビールがありました。地元産の野菜を使ったポテトケーキ、チーズケーキ、キャロットケーキ、花豆のケーキ、そしてビーフシチューがあったのです。このお店の存在を知ってからは、3月はスキー場から通い5月はペンションから通い、8月キャンプ場から通い、という戸隠通いが10年間位は続いたでしょうか。その後は、年末にお蕎麦や燻製と一緒に花豆ケーキを取り寄せる繋がりになってしまいましたが、我が青春の大切な思い出の土地のカフェです。

 いつか、再訪してゆっくりワインやビールを飲みながら、お互いに若かった頃の話をしたいものです。(画像③)

 


(画像③おとなの週末)

 

 

■カルミネ・アバーテ著「海と山のオムレツ」新潮社 (2024.3.15発行) 中古本

 1954年、イタリア南部カラブリア州出身の作家が、幼少期からの食と生活のエピソードを綴った16の短篇が収められている。イタリアの伝統食材、伝統料理、マンマの郷土料理をレシピではなく、食べ物の味や香り、色、それらを調理してくれた人、一緒に食した人たちとの表情や情景、気持ちまで再現されていて、気持ちが良かった。巻頭に書かれているのが「料理をし、それを共に食すという行為は、迎え入れることを意味する。食する者や友、そして子供や孫を。」

 42~47頁の「クリスマスの十三品のご馳走」には、「‥三種のパスタ料理もたちまち食べつくされると、間をおかずにメインディッシュが運ばれてくる。オリーヴ、ケッパー、トマト、玉葱、レーズン、それにオリーヴオイルをベースにした最高のソースと一緒に浅鍋で煮込んだ塩漬け鱈。仔山羊とシーラ山地で穫れたじゃが芋のオーブン焼き。付け合わせには自家栽培のチコリとカリフラワーとブロッコリーをフライパンで炒めたもの、『ちび玉葱』のオリーヴオイルと粉唐辛子和え、キャベツの蒸し煮、セロリと茴香のフレッシュサラダ、キノコと茄子とアーティチョークのオイル漬け。‥」

 どうしようもなく、食べる喜びに溢れた16篇でした。(画像④)

 


(画像④海と山のオムレツ史)

 

 

■「暮しの手帖 第32号」(2024.9.25発行) 新刊本

 朝ドラ「虎に翼」については、様々な雑誌、サイトで取り上げられてきました。今号では、脚本家の吉田恵里香さんと元NHKアナウンサーの山根基世さんの対談が6~13頁に掲載されていました。一冊目の池波正太郎さんのエッセイ「駿河路」と、「虎に翼」での憲法十四条はつながっている事だと思います。吉田さんの「ちょっと武骨でも、ド直球で。なかなか届かなくても、耳元で叫ぶ。一人でも二人でも、今の時代の危機感に気づいてもらいたいんです。」このドラマはスタンディング・オベーションでしたね。

 料理の特集は、「ご飯がすすむ、秋鮭のおかず」でした。新潟出身のしらいのりこさんによる秋鮭の料理レシピ。「鮭の焼漬」、「鮭のエスニックふう酒蒸し」「鮭の煮つけ」「鮭のみそ漬け焼き」「鮭のコロッケ」「鮭のムニエル」が紹介されていました。「鮭の焼漬」は新潟の郷土料理で、保存食として昔から作られてきた漁師料理。焼いた鮭を甘辛い醤油タレに着けたもので、冷蔵庫で一週間ほどは保存できるとのことでした。

 「暮らしのヒント集」の頁には、毎号、はっとさせられる記事があります。

 「旅行先で訪れる飲食店などに迷ったら、雑誌のバックナンバーから数年前の紀行記事を探してみましょう。今もまだ残っているようなら、地元の人にも愛されるお店かもしれませんよ。」私は、これまで初めての旅行先で見つけて、この「とりとてちん」に書かせていただいたお店は、この方法で見つけることが多かったです。または、その地元の飲食店案内ガイドブックとかミニコミ誌(地方によっては、まだまだ発行されているんですよ)に掲載されているお店は、信用できましたね。(画像⑤)

 

 


(画像⑤暮しの手帖)

 

  9月24日(火)は、浜松三ツ星会の勉強会でした。前身のタカラソース創業より今年で100周年を迎えられた鳥居食品株式会社のトリイソース工場の見学でした。ご存じの方はご存じなのですが、食品添加物を使わないソースつくりの為、ペーストではないまるごと生野菜を低温で煮込み旨味を引き出し、昆布、鰹の荒節、原塩、種子島の砂糖などを使って、いやみのないまろやかな味に仕上げているとの説明でした。

 JAなどからは野菜は、なるべく地産地消を勧められているが、全部は揃わないので取り寄せられる産地からと割り切っているとのことでした。ウスター、中濃、桶底ソースの製法の違い、香辛料を加える工程、木桶による熟成などなど、わかりやすく教えていただけました。ありがとうございました。来年6月には、自社地内にレストラン開業をして、販路拡大を目指されているのだそうです。オープン後には伺わさせていただきます。(画像⑥、⑦、⑧)
 

 


(画像⑥浜松三ツ星会の勉強会)

 


(画像⑦トリイソース)

 

 



(画像⑧木桶による熟成)

 

2024.10.25 清八



38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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