「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「2025年、アフターコロナのエトセトラを報告?します 2月篇」

 

 清八でございます。毎月、「食」に関する書籍・漫画・DVDなど、主に中古品を探しては買い求め、読んだり、観たりして学習しております。それでは、2月分を報告させていただきます。名古屋での食レポもあります。

 2月21日、二年ぶりに北村想作品の演劇「空がとっても青いからⅢ」を観に、「円頓寺Les Piliers」に行ってきました。私は、1980年代からのファンです。北村想の代表作「寿歌」は1979年に名古屋市内で発表された戯曲ですが、あっという間に、東京と大阪での上演が続き「現代演劇の古典」といわれている作品です。私は、1980年5月に大阪の阪急ファイブ・オレンジルームのチラシで、初めてこの演劇の存在を知り、名古屋の大須共同スタジオで観て、感激、カルチャーショックを受けました。その後、北村想ファンとなり、劇団「彗星’86」「プロジェクト・ナビ」「avecビーズ」としての各公演を観るために、コロナ禍を除き名古屋へは2023年1月まで37年近く通い続けました。「avecビーズ」解散公演「港町memoroal Ⅱ」を観て、これでもう新作を観ることも出来なくなり、夕方から「天ぷら小島」本店で創作てんぷらを味わうこともなくなるのかと、心が折れておりました。それが、今後、劇団員は異なるが、新作を上演するとのお知らせが届いたのです。(画像①)

会場は20席の小劇場でしたが秘密のアジトのような場所でした。このような商店街の通りにありました。(画像②)小劇場が乱立していた時代、50席未満の小劇場がたくさんあって、その空間に居るだけで、わくわく感がありました。久しぶりに興奮して約90分の体験をしました。核戦争後の荒野を散歩していたら、ある喫茶店に集まった四人のお喋りが始まったという内容でした。ロシアとウクライナ、プーチン後の世界、アメリカの民主主義まで取り上げた、凄い作品でした。上演中は撮影できないので終演後の舞台空間です。(画像③)

 


(画像①北村想作品の演劇)

 


(画像②商店街の通り)

 


(画像③終演後の舞台空間)

 

 

 この晩も17時30分から、柳橋市場内の「天ぷら小島」本店(画像④)に予約をしておりました。2015年の夏、元イタリアンシェフの小島氏が数人のメンバーと創業。柳橋市場内の新鮮な食材を使っての天ぷらをカウンター越しにシェフと会話しながら、ビールやワインを楽しめるという名古屋駅から徒歩圏内という夢のようなお店だったのです。このお店の紹介は、「ちりとてちんNo.143」「ちりとてちんNo.157」に掲載してありますので、ご興味がありましたらご覧下さい。全国の飲食店で値上がりが続いております。このお店も同様に値上がっておりました。しかしながら、サッポロ赤星瓶(大)ビール1本、テンプラーニャ赤ワイン1本、グラス赤ワイン1杯、「あん肝のレバ刺し風」(画像⑤)「炙りぶりの刺身」(画像⑥)「海苔いくらカナッペ(2ケ)」(画像⑦)「牡蠣の天ぷら(4ケ)」(画像⑧)「春菊パルミジャーノ」(画像⑨)「ぐじ(2ケ)」(画像⑩)「カマンベール(2ケ)」(画像⑪)「鱈の白子軍艦(2ケ)」(画像⑫)「ちくわ磯部(2ケ)」(画像⑬)「蟹あし(2ケ)」(画像⑭)。以上で税込み12,000円でした。一年に一回は、演劇と天ぷらの日帰りツアー、いつまでも続けたいものです。

 


(画像④天ぷら小島)

 


(画像⑤あん肝のレバ刺し風)

 


(画像⑥炙りぶりの刺身)

 


(画像⑦海苔いくらカナッペ(2ケ))

 


(画像⑧牡蠣の天ぷら(4ケ))

 


(画像⑨春菊パルミジャーノ)

 


(画像⑩ぐじ(2ケ))

 


(画像⑪カマンベール(2ケ))


(画像⑫鱈の白子軍艦(2ケ))

 


(画像⑬ちくわ磯部(2ケ))

 


(画像⑭蟹あし(2ケ))

 

 

■繻鳳花著「中世ヨーロッパのレシピ」新紀元社(2018.12.25) 中古本

 主に中世ヨーロッパ時代にあった料理・舞踏(民衆ダンス)の再現・アレンジを施した料理レシピ研究を中心に活動されている筆者によるレシピ集でした。

 9~16頁に中世の料理集で登場するスパイスとして、クローブ・シナモン・ジンジャー・クミン・キャラウェイ・アニス・ガーリックペッパー・サフラン・プリムローズ・ローズマリー・バジル・セージ・パセリなどが紹介されていました。

 料理としては、当時の貴族や王族が食していたと考えられるラインナップでした。15世紀に登場するのが22頁「アスパラガスのサラダ」でした。5~6分ほど熱湯で茹でて、オリーブオイル・赤ワインビネガー・黒胡椒のドレッシングなのですが、薄味なので後から岩塩を振りかけたようです、と紹介されています。

 51~52頁に「水」が説明されています。「‥中世の料理を作る時、たまに硬水を使うことがありますが、これにはワケがあります。硬水で作った煮込み料理はアクや肉の臭みをかなり消してくれるので、水自体が臭み消しの役割をしています。軟水と硬水だと確かに味わいとツンとくる臭いに差があります。西洋ファンタジーのある場面で「川にある水を飲む」という表現がしばしば見られますが、結論からいうとアリといえばアリです。ヨーロッパはもともと高い山々からキレイな天然水を運んできますから、そのままでも飲めることは多いようです。ただ、先述にもあったようにマグネシウムの含有量が多い「硬水」なので、飲みすぎには注意した方がいいでしょう。」

 勉強になりました。(画像⑮)

 


(画像⑮中世ヨーロッパのレシピ)

 

 

■小菅桂子著「にっぽん洋食物語大全」ちくま文庫(2017.8.10) 中古本

 トンカツ、コロッケ、カレーライス、アイスクリームなど、日本の洋食がどのように生まれ育っていったのかをまとめられた、まさに大全でした。133~156頁に「コロッケ秘録」があります。「‥余談だが、コロッケそばというのをご存じだろうか?そんなものあるの?本当にあるのです。それも明治の昔から。生まれは東京日本橋浜町。チャキチャキの江戸っ子そばなのである。新島繁著の「新撰蕎麦事典」によると、雑誌「太陽」(明治三十一年)の随筆『ひかえ帳』の中に『コロケット(仏croquette)蕎麦といえるを、花屋敷の吉田にて出したり』とあり、コロッケそばの登場を紹介している。花屋敷というのは日本橋浜町のこと。吉田というのは座敷をしつらえた当時有名なそば店だったが、第二次大戦中疎開したまま廃業している。そしていま『コロッケそば』に受け継がれている。コロッケそばは、鶏肉を叩いた卵形のコロッケをそばの上に置いたもの。四月に食べた時は八百五十円であった。

 359~384頁に「食堂車見聞録」があります。昭和四年九月十五日、東京―下関間に特急”富士”、続いて十月一日には東京―神戸間に”つばめ”が誕生している。昭和九年五月一日という日付の入った献立はなかなか洒落ている。

  • 御夕食 金一円五十銭
  • スープ
  • 輪切り鱒の網焼き
  • 生椎茸の麺包焼きに莢豌豆添え
  • 牛背肉蒸焼きにマセドアンサラダ
  • 色分けのゼリ
  • 果物
  • 珈琲又は紅茶

 こんな献立もあり、しかも、「御夕食献立の内御気に召さぬ料理がございましたら左記料理に御取換え致します」として、ビーフカツレツ、アスパラガス、チキンライス。

 ※昭和9年ですよ。これは、現在の豪華列車の料理よりレベルが高かったかもしれませんね。(画像⑯)

 


(画像⑯にっぽん洋食物語大全)

 

 

■「新潮」編集部編「パンデミック日記」新潮社 (2021.6.25) 中古本

 世界中が新型コロナウィルスに翻弄された、激動の2020年。新潮社が52人の表現者の日記を出版していました。私は、この国の政府、厚生労働省、博物館、図書館がどうして今回の新型コロナウィルスに対して議員たちは、行政は、民間は、飲食業は、国民は、何をどうしていたのかを記録しないのだろうかと疑問に思ってきました。「ちりとてちんNO.211」では、「シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録」を紹介しました。「ちりとてちんNo.211」では、「日本水商売協会―コロナ禍の『夜の街を支えて』を紹介しました。そして、今回、この一冊は、作家・表現者たちでした。

 34~38頁は、ヤマザキ・マリさんでした。「‥2月27日(木) 先日、階下に暮らすご夫婦からいただいた立派なタラバガニとケガニを食べに来ることになっていた3人の女友達のうちのひとりから「鼻風邪っぽい、今日はどうしたらいいだろう」という連絡。世の人々は新型コロナウィルスを巡って錯綜する情報に振り回され、疲れが見え始めている。オリンピックを何としても実施したいという情報に振り回され、疲れが見え始めている。オリンピックを何としても実施したいという政府とIOCの維持が、このような混乱を招いている要因なもなっているのだろうかと訝しむ。政府は今日、全国の小・中・高をしばらく臨時休校にすることを要請、まだ子供が小さい就労者の親は困るだろうと思うがその対応策はあるのだろうか。一つの情報からいくつもの不安が吹き出してくる。‥」

 66~69頁は、金井美恵子さんでした。「‥テレビのニュースで早稲田の商店街の食堂の店主が、大学がロックアウトになり学生客が激減し、開店以来の経営危機と語っていた。校門に『学内への立入り禁止』という看板があったが、大学がバリケード封鎖に対抗したわけでもないのだから、ロックアウトはないだろう。コロナ禍、いろいろと経済的に大変だから、学費を半額にしてくださいと、慎しく学生諸君が大学に要望する時代である。小池都知事が、オリンピック延期決定後に指導者顔で口走っていたロックダウンという言葉に店主はつい反応して思い出したのだろう。(画像⑰)

 

 


(画像⑰パンデミック日記)

 

 

■安部夜郎著「深夜食堂23」小学館 (2021.3.3) 中古本漫画

 今回のお品書きは、「タコさんウィンナー」「刺身こんにゃく」「八宝菜」「ザーサイとメンマ」「そうめん」「油琳鶏」「ラーやっこ」「青唐辛子のみそ漬け」「えのきのステーキ」「里芋の鶏そぼろあんかけ」「しょうゆマヨスパゲティ」「とろろ昆布かけ温豆腐」「板わさ」「七草がゆ」でした。

 45~54頁の「そうめん」。「チョイそうめん」というメニューがありました。ガラスの器にチョイと乗った夏限定のそうめんで、薬味は青ねぎとおろししょうが。前菜か〆に注文するお客さんが多いと描かれていました。コロナ禍明けの年の8月下旬、仲間内の久々の飲み会で一年ぶりの居酒屋に行きました。いわゆる飲み放題の店でした。〆に、この「チョイそうめん」が出されたのですが、前菜が千切ったキャベツ、突き出しが5センチ径の小皿に載せられたもずく、刺身は三種盛りで一人一切れ、豆腐一丁を何人前にしたのと思われる温豆腐、ほとんど衣の串カツ、殆ど具がないスリムなピザ、そして〆が「チョイそうめん」でした。追加料理を頼んだら、飲み放題のコース料理なので追加はできないと断られ、このお店とはお付き合いを止めたという経験があります。

 107~116頁の「しょうゆマヨスパゲティ」。「‥ゆでたてのスパゲッティに大量のかつおぶしをかけ、しょうゆとマヨネーズで合える。‥作家・椎名誠さん考案ともいわれるスパゲティだ。」から始まるお話でした。そういえば、かつおぶしが無い時は、しょうゆとマヨネーズで試したことがあって、これはこれで美味しかったですよ。(画像⑱)

 


(画像⑱深夜食堂)

 

2025.3.25 清八



38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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