Rughetta ルッコラ
田原の高木さんが作ってくれているルッコラ(ローマではルゲッタ)ほろ苦いサラダで、ローマを代表する春の味覚です。フラスカティに住んでいる時、車で通りががった街道沿いの小高い丘一面がルゲッタの丘になっていて、始めそこに車を止めスーパーの買い物袋を持ったご夫婦が何やら摘んでいるのを見かけて不思議に思い車を止めて尋ねました。『何を摘んでいるんですか?』『ルゲッタだよ。美味しいよ。』・・・へー。ルゲッタってメルカートで売ってるものだけじゃなくて野生のもあるんだ。って、イタリアでもローマ以外でのルゲッタと言う野菜の食性は知りませんが、自分が見たのは春の味覚を採取するイタリア(ローマ)人の風景でした。日本でいうと土筆や蕨摘み。や山菜獲り。ちょっと臭いけれど銀杏拾い。言ってみればそんな感覚みたいです。
そんなルゲッタにはこの野菜のほろ苦さの様にほろ苦い思い出があります。オープンした頃、今から20年前頃はこのルゲッタを使った料理、例えば牛肉のカルパッチョとかなんかは上にのったルゲッタだけ外されるなんてかなり頻繁にありました。ほんとめげましたが、そこを変えてしまったんではそもそも本来あるべき形の牛肉のカルパッチョにはならないと。腹をくくり開き直って変えることはしませんでした。日に何度もことごとくそういった形でお皿に緑色のルゲッタだけ取り残されて帰ってくることが続くと、ほんとにこういうちゃんとした料理を目指してやっていていいんだろうか。って何度も思いました。
いつの頃からかそういったことがなくなり今ではこのルッコラ美味しいですね。って言ってもらえることが増えました。
今の若い料理人の人たりはスタートからこんなにいい食材に恵まれていて、情報もあり。お客さんたち食べての技量もかなり上がってきています。ピンポイントではお客様の方が情報を持っている部分も増えましたし、食べこんでる人には外食頻度は絶対にかないません。ただ自分の強みは食材のシンプルかつ美味しく調理するかっていう見極めの掘り下げ方と経験値!そこをどんだけブラッシュアップ出来続けられるかが勝負所であり、今後もお客様をひきつけ続けられるか自分なりに自覚しています。ただ、物を作る(創る)っていくうえでいつも心に刻んでいる言葉があって、女優の原日出子さんが言われていたことですが『物(なんでもいいですが)の寿命って、どれだけもがいたか。あらがったかがそのものの寿命の長さになるんじゃあないかって思います。』
すーっと思ったようにうまくいかなかった。それでもあきらめずにやり通せたか。続けていたか。ってのを経験している分。今となってはそれも自分のお店や料理の色や強みになってるんじゃあないかと思っていて。それこそよく言うんですが、初めからすべてそろっているなんて気持ちで始めたわけではないですし、レストランを分かっている%はどんな町や大都市でも同じで、東京はそのパイがでかいからこの価格帯でもやっていけるんだよって自分に諭してくださったACQUA PAZZAの元オーナーの言葉を胸に豊橋で開業して初めにぶつかった壁がこのルゲッタでした。ほんと“荒れ地に花を咲かせましょう”精神でかれこれ20年です。
実感としてはだいぶんと転がっていた石ころや砂利がなくって、やっと畑に開墾でき、種まきを済ませ、今発芽してきたところ。って感じですか。そうしながら自分たちもかなりお客様に成長さてていただきました。ま。お互いさまってことなんですね。共に歩んできたなって。
名実ともにほろ苦いRughettaの思い出。
がんばりまーす。
それと、こんなイタリアのものと比べても引けを全くとっていないこんなルゲッタを作ってくれている高木さんに感謝です。
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