もう前々から舞台が近づくにつれプレッシャーをかけられてきましたが、『本番の舞台には魔物が住む』であり『一度の舞台は1年分の練習より実りがある』・・・もちろん普段からお稽古をしていてって言うのが『』でついてになりますし、本番は普段絶対にお稽古中にしないことや、起きえないことが起きるって、散々脅されてきました。
第一曲目に執り行われた全員参加の演奏会は緊張はするものの自分も3年ほど稽古をしてきた曲で体にある程度しみこんだ“小鍛冶”と言う曲目だったので何とか大きなミスをすることもなく終えることが出来ましたが、本番の10曲目“連獅子”!一番気を使っていた所が、長唄って演奏中に3本ある三味線の弦のどれかどの調子を変えるって所作が入る曲があります。この“連獅子”は前半過ぎに真ん中の二の糸を一度上げ(本調子から二上がり)その後中盤過ぎにもう一度二の糸を下げる(二上がりから本調子)と言う所作をしながら(もちろん調子をその短い間に合わせて上げ下げをしなくては演奏に支障が出ます)何食わぬ顔で、さも当たり前のように演奏しなくてはいけません。
ところがです!で、その前に三味線の構造ですが竿(木です)に糸止め(白い部分ですが象牙です)なので、木の硬さと象牙の硬さをうまく利用してねじ込む、もしくは緩めながら止めるのですが、あまりぎゅうぎゅうとやると象牙なので折れるんです。これが高いんです。ですから力ずくでもダメ。やさしくすると糸が思ったところで止まらない。それを演奏中に瞬時にパシっと決めなくてはいけません。これが今回あろうことか、僕のところに魔物が潜んでいました!今まで一度も経験にないくらいに、はじめっからぎゅうぎゅうにねじ込んでしまっていました。怖かったんですね。すっぽ抜けるのが。二上がりに上げるのは今までだいぶんと練習してきていて、ほとんど失敗がないようになっていましたが、演奏中その個所に来てさあ来たよ。って思って糸巻きを掴んだところびくともしません。サーっと血の気が引きました。なんとかぐい。っと引き上げて演奏に入りましたが、頭の中で『弦を上げる時にこの硬さだと、ただでさえ苦手な弦を下げる段階で力ずくで下げるてすっぽ抜けると大変なことになる』って考えながら演奏するもんですから生きた心地がしませんでしたし、こんなに脂汗が出たことも人生初めてかもっていうくらい。いっぺんに自分の脳みそがフル回転、ブルース・ウィルスの映画ダイ・ハードの様に、赤だか黄色だかのサイレンがずっとなっているような気分でした。のちに帰宅して観に来てくれた三女千春と由貴さんに聞いたところ『演奏中ものすごい顔になっていたよ』って言われて『ハーっ。そうだったか』って、自分では頭をフル回転しながら何気ない涼やかなふりをしているつもりでしたが、現実は焦っているそのままが出ていたようです。
ま。それも演奏会の明日へ向けての収穫だと思い、また稽古に励みます。
演奏が終わって、ま。打ち上げでほっと一息。美味しくビールをいただけました。また明日から気を取り直して精進です。
“まだまだ修行が足りません”です。
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