もう10年以上前になりますか、日本にどんどん品質の良いプロシュットが入ってくるようになっていたころ、ランチには”生ハムと露地野菜のマリネ”と言うメニューがその当時の定番としてありました。
ただとても良い生ハムだったので、そうして提供することが悪いわけではないのですがもう少しストレートに出せないものかとうだうだと悩んでいた時期がありました。・・・イタリア料理店を長年営んでいて時折思うことがあるんですが、もちろんすべてではないですし、ここは日本だ!って言うことも重々理解していることですが、こうやってはイタリア人は食べないって言うことがあったとしても、その方がオーダーされやすかったり、喜ばれたりって言うことだとそっち側に舵を切る場合があります。ただそれが長く続くとどうしても違和感やストレスにつながります。ただイタリアはこうだ!って、我を通してほとんど出ないって言うのもどうかと思う冷めた頭ももちろん持っていて、どこで折り合いをつけるかっていつも考え所です。そこでいつも揺れています。
そうこうしている時、イタリアに行く機会がありました。お世話になっていたローマの藪本ファミリーのご招待を受け、当時の仲間(ローマ在住の先輩達)にもお声がけしていただきローマの老舗レストランの一軒 RISTORANTE NINOでの食事会を催していただきました。そこで一番印象に残ったことが生ハム”プロシュット”でした。10人からなるローマ在住の日本人がそろってプロシュットを注文しました。久しぶりのイタリア(ローマ)で、なんでまた住んでいて何時でも食べれそうな料理をなんでまた注文したんだろうと、当時日本でのプロシュットの蟠りがあったこともあって愚問ながら尋ねました。「このお店のプロシュットはどこのAlimentari(食料品店)で買うより美味しいものを提供しているのがこのお店だから」と言う話を聞き、なんか一気に雲が晴れる思いがしましたし、NINOで提供されているプロシュットはお皿一杯に生ハムだけが盛られている潔さ。やっぱりこれでいいんだ。と。それから生ハムだけで提供することに迷いはなくなりました。
だだこの頃思うことは、23年もそれなりに貫いて(もう若くないのでだいぶ丸くなりましたが)、だだ今思うに何料理もですが、その国や、地方、勿論日本だって全く地域ごとに様々な料理がありその土地に根差しています。それをぱっと理解なんてできないでしょう。30年イタリア料理に四つに組んでいますが、いまだに分からないことだらけ。
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