今年も天然鮎のシーズンが始まりました。
もともとイタリアには鮎はいません。その変わり鱒になるとは思いますが清流がある地域が限られますし、そもそも流通もありません。賄いように時々養殖だと思いますが鱒が届いてローズマリーとニンニクを詰めてローストにして食べました。それがイタリアでの唯一の経験でした。
イタリア中ざっとですが縦断旅行をしましたし、もちろん5年生活した中で内陸部ポー川流域では蛙、鯰、川カマス、鮒や鯉の料理の一部は見たこと、食べたことはありましたが、清流の魚はレストランや家庭に招かれて食べたことはありませんでした。
とは言え、地元豊川上流域、例えば振草川などなどで鮎が水揚げされるので、何かこの食材にあった提供の仕方を!とずっと試行錯誤をしてきました。前菜にしてみたりパスタ料理にも挑戦しました。主菜のお魚料理としても試行錯誤しました。
ただ、今思えばそれぞれ暗中模索・五里霧中と言った方がいい。
料理のクオリティーの問題のことも無きにしも非ずだったかもしれませんが、それなりのクオリティーであったとしてもお客様にチョイスしていただかなくては駄目なわけで、言ってみれば理想形は”相思相愛”でないと長く提供して行けないです。
それに鮎がうちの手元に届くのが鮎の解禁の6月中旬から9月ごろまでで、天候やお盆など入荷はないので実質2ヶ月はありません。試行錯誤する余裕もない中でシーズンが毎年過ぎて行きました。
ある時料理書をぱらぱらとめくっていてイタリア中部ウンブリア州”ノルチア村”トリュフの産地でもあるその村のレストランが掲載されていました。土地柄名物のトリュフ尽くし料理が掲載されていて、”鱒のトリュフ風味”って言うのが掲載されていたのですが、そのままだとうちの料理にマッチしない感じがしていたのでその写真は何度も何度も見ていたのですが、その時にはふとこれをパスタに転用した方がうちの料理の構成に合うのではないかと思い、もともと提供していた”のルチア風夏トリュフのタリアッテッレ”に炭火焼にした鮎のほぐし身を加えてみると、これがびっくりするくらい相性がよくって、それにお客様の評判もすこぶる良くって、今日に至るこの時期を代表する料理になってきています。
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