浜松三ツ星会「一泊二日、三鞍の山荘研修」に行ってまいりました
10/29,30。爽やかな秋晴れの中、森町の奥地にあるオーベルジュ「三鞍の山荘」にて浜松三ツ星会の「一泊二日研修」が行われました。参加人数は9名と少人数ではありましたが、中華、和食、フレンチ、報道関係etc…様々なジャンルで活躍するメンバーがワイン片手に和気藹々と意見交換をし、また何より浜松フレンチの礎を築かれたレジェンド「今井克宏」シェフから学ばせていただくという大変貴重な体験となりました。
今井克宏シェフは現在「79歳」とのこと。まだまだお元気!現役でシェフをしておられます。かつてスイス・フランス・ドイツ・イタリアの有名レストランで修行を重ね、日本代表として出場した1972年「第11回 世界料理大会」では、初参加ながら見事「金賞」という栄誉を勝ち取られたメンバーのお一人です。その後もさまざまなレストランを経て、フランス料理界の黎明期を支えてきた人物。そういえば、名前ぐらいは聞いたことあるかも・・という方も多いのではないでしょうか。人生を料理に捧げてきたシェフが、華々しい都会を離れ、山奥のレストランというスタイルにたどり着いてから24年が経過した今、いったい何を思うのか。とても興味深いですね。
「三鞍の山荘」は、とにかく場所がわかりにくいということでも有名。公式ホームページにも“注意書き”がたくさんされている程で、カーナビがあっても、案内の看板がたくさん立っていても、迷ってしまうお客さんが絶えないのだとか (-。-;
今回の研修の予約の際にも、支配人の県さんから「迷ったら電話くださいね」と念を押されました(笑)。この秋冬の時期はだんだんと陽が暮れるのも早くなりますので、三鞍の山荘をご利用の際には、とにかく明るいうちに到着するよう前もって計画を立てることをお勧めいたします。
森町の市街地からさらに北へ車を走らせると「三鞍の山荘」の看板が見つかります。山道をクネクネと登ってようやくたどり着いた山荘の周辺には数件の民家がある程度で、あとは見渡す限りの大自然の風景。風に揺れる「ススキ」、雲ひとつ無く透き通った「青空」、鳥のさえずり、力強い山々etc…お料理だけではない「ご馳走」がそこには用意されていました。
なんとか無事に?迷うことなく?おおむね?(笑)集合時間までに全てのメンバーが揃うことができ、いよいよディナータイムです。憧れの「ムッシュ今井」とのご対面とあって、メンバーの皆さんも最初は少し緊張を隠せないご様子でしたが、「支配人の県さん」の気さくな配慮もあり、徐々に緊張もほぐれてきました。
まずは前菜。ソーセージやチーズ、ハムなどの「こだわりの燻製」や、アンデイブ、フルーツなど盛りだくさんの「森のサラダ」。「フレンチドレッシング」と「梅ドレッシング」がバランス良く美味しい。特にこの「梅ソース」は今井シェフのスペシャリテだそう。お客様が年齢を問わず、さっぱりとコースの最後まで沢山美味しく食べられるような配慮がなされているのです。
お次は「野菜のスープ」。一晩じっくり煮込まれている為、野菜の旨味や甘味が凝縮されてとても優しい味に仕上げられています。ディルなどのハーブの香りが食欲をそそる一品です。今井シェフ自身、これまでこのスープを「お料理教室」で教える際には、「15分煮てやめましょう」が基本で、短時間で作ることを推奨してきたとのことですが、年齢を重ねるごと準備に「横着&手抜き」をするようになり、前の晩にスープを作っておくようになったことが、現在、シェフの作る野菜スープの「美味しさ」にたどり着くきっかけだったとのこと。
ふっくらと焼き上げられた「ホタテ貝のムース」と「スズキ」を「特製アメリケーヌソース」と共に味わう「海の幸のニース風」。香ばしい甲殻類のソースは、思わず最後までパンで拭って食べてしまう美味しさ。アメリケーヌソースをさらに煮詰めて、「マッシュルーム」と「生クリーム」を加えて濃縮された味を表現しています。フランス料理の醍醐味、それは今井シェフ曰く「煮詰める事」。シェフは、調理場に返ってくるきれいに掃除された皿を確認して、お客様が満足されているかどうかを見るのが楽しみなんだそうです。
メインの肉料理「ビーフシチュー温野菜添え」は、柔らかさの中にも弾力を残す絶妙な煮込み具合で、プロの料理人の皆さんを唸らせる一皿に仕上がっていました。今回の参加者、ラ・サリーブの鈴木シェフ曰く「柔らかいだけのビーフシチューは絶対ダメ!」とのことで、今井シェフの作るこの料理の奥深さを感じることができました。デミグラスソースと生クリームのソースが満足感をさらに引き立て、もちろんこのお皿もきれいにさせていただきました。
料理の他にも特筆すべきは「支配人・県さん」の細やかな気配りによるサービスです。絶妙なタイミングで運ばれてくるお料理やパン、そしてドリンク。お客さんを飽きさせない巧みな話術や写真の撮影etc…支配人のお人柄あふれる「おもてなし」によって、アットホームな雰囲気でリラックスしながらお食事を楽しむことができるのです。県さんの下積み時代のお話も大変面白く興味深く聞かせていただきました。
最後は、今井シェフと食卓を共に囲んでお茶を飲みながら色々なお話をお聞きしました。ヨーロッパ修行時代の思い出話や、奥様を亡くされてからの人生観の変化、歳を重ねるうちにたどり着いた「手抜き」の方法、健康管理についてetc…
あっという間に時間は流れていき、とても意義深く充実したディナータイムを過ごさせていただきました。
参加メンバーのご紹介
「ラ・サリーブ」鈴木シェフと「四川飯店」水沼シェフ
浜松三ツ星会 会長 「新中国料理 ムーラン」内田シェフ
「SBS静岡放送」柴さんと「中国料理 好」 赤堀シェフ
「創作料理 類」横山夫妻
…というわけで、無事に1日目の日程を終えることができました。