2009年2月10日に、北海道洞爺湖サミット総料理長の中村勝宏氏をお迎えし、洞爺湖サミットで提供された料理を実演し解説して頂く、特別料理講習会を開催しました。
エスプリとともに実演された料理
実演された料理は、緑健トマトのカクテル、緑健トマトの詰め物ハチミツ風味、蒸し蝦夷あわびのポワレの3品。応援に駆けつけた三ツ星会スタッフと協力しながら、鮮やかな手つきで料理を実演。そしてところどころに笑いと、そして料理のポイントや考えを織り交ぜて実演してくださいました。
いかに食材の持ち味を素直に引き出すか
料理に関しては、いかに手間をかけないかがポイントであり、その理由として手間をかければかけるほど、食材の良さが失われてしまうことを挙げられました。しかし食材の持ち味を素直に引き出す基本を身につけるためには、若い時に手間をかけた料理を作らないと技術が身につかないと述べられ、真剣に聞く東海調理師専門学校の生徒さんたちに熱いエールを贈られました。
左上:緑健トマトのカクテル 右上:緑健トマトの詰め物ハチミツ風味 左:蒸し蝦夷あわびのポワレ |
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無い無いづくしから始まった洞爺湖サミット
実演が終わった後は、洞爺湖サミットでのお話を聞かせていただきました。
サミットの会場といえば、設備も人材も完全に揃っている状態を想像しますが、中村ムッシュが赴任した際、ホテルには設備もスタッフも、そして大切なモチベーションも無かったため、まずスタッフ集めからスタート。そして使用する食材に関しても、多くの人にチェックされるため自由にならず。さらに個人的な好みや宗教的な理由で食べられないものなどの指示が直前になって入ることなど、とても制約が多い仕事だったそうです。
料理人に課せられた使命とは
サミットでは食料問題も主要な論題でしたから、“贅沢な食事”を疑問視する報道も一部では流れたようです。しかし料理の心は、おもてなしの心。自分たちの持っている全てのものを出し切ってこそ、最高のもてなしとなります。中村ムッシュは自らの責務を、日本の威信をかけて最高のおもてなしをすることと決意。テーマを「北海道の大地と海からの恵み ー上質な素朴ー」と定め、できるだけ北海道の食材を使ってメニューを提供されました。その結果、「首脳たちの話し合いが止まってしまうほど、素晴らしい料理だった」と感想をいただいたそうです。
私たちの日常の仕事でも制約は多くあります。しかしその中でもこの土地の食材を使った料理で、最高のおもてなしをしたいと、今回の講習会を通してまた想いを新たにすることができました。
中村ムッシュ、本当にありがとうございました。
【中村勝宏氏プロフィール】
鹿児島県出身。1970年、26歳で渡仏。各地で研鑽を積み、79年には日本人初のミシュラン一つ星を獲得。84年に帰国後、(株)ホテルメトロポリタンエドモントの総料理長に就任。2003年フランス共和国より「フランス農事功労章シュバリエ」を受章。同章の日本人受章者の団体であるフランス農事功労章受章者協会(MOMAJ)で食育担当理事を務める。2008年北海道洞爺湖サミット総料理長を務め上げ、現在に至る。
たくさんの方が参加してくださいました | 中村ムッシュを三ツ星会にご紹介して くださった、永田照喜治先生 |
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スタッフを使う手際の良さも さすがグランシェフ |
試食中。思わず笑みがこぼれます | |
たくさんのご参加ありがとうございました | 交流会でも貴重なお話を お聞きすることができました |