清八でございます。ごぶさたでございます。
3.11の夜から全国紙や民放テレビ、週刊誌等の地震・津波・原発報道から避けるようにパソコンでネット上でのサイトを覗いたり、ラジオ岩手・ラジオ福島で現地の最新の情報 だけを聞いて、本当は何が起こっているのかを考えるようになったこの一ヶ月でした。先の 天皇様のご病気・ご崩御の際にも、噺家・寄席芸人・お笑いタレントたちは仕事をキャンセルされ拍手してはいけない、笑ってはいけないという環境での生活を余儀なくされました。 今回も同様に自粛ムードでしたが、すでに連休前から各業界が「自粛解禁」どころか、「お祭り騒ぎ」に移ろうと画策しているようですが、今回ばかりは理解できないのは私だけでしょうか。最近、久しぶりの落語会で笑った話がありました。ある二つ目さんのマクラでしたが。
「最近、国内での移動に飛行機に乗れるようになりまして……。映画やテレビドラマでは見たことあったんですが、この間の出来事です。あのフライト・アテンダントさんね、言いにくいですが。控えコーナーのカーテンが突然開いて、『お客さまの中に、お医者さまはいらっしゃいませんか』、これやなと思いましたね。ほんものやと。するとね、私の隣の席に座ってはった男性がぱっと手を上げまして、『わたし、医者ですが』言うてね。もう、自分やないのに、どきどきしてきまして、どないなんのやろぅと期待しますやん。ほたら、そのフライト・アテンダントさんが、つかつかっと近づいてきて、その男性の手を握ってね、『あの、よろしかったら、お電話番号、教えていただけますぅ』創った話かもしれませんが、思わず吹いて しまいました。
さて、居酒屋さんで、突き出しに若筍煮が出てくるシーズンになりました。落語にはお侍さんも登場しますが、こんな洒落たお侍もいたんやそうです。「こりゃこりゃ、可内」「ねい」「今日のおかずは何じゃ」「筍でございます」「ほほぅ、筍とは珍味じゃが、いずこよりか到来いたしたか」「いや、到来はいたしません」「しからば八百屋にて買い求めたか」「買い求めもいたしません」「到来もせず、買い求めもせぬ筍がどうして、うちにあるな」「えぇ、ご隣家の筍がこっちの庭に顔を出しましたんで。で、こいつを掘り取りました」「何と申す。隣家の物を無断にて掘り取るとは……、あの、ここな不届者め、渇しても盗泉の水を飲まずとは古人の戒め。何ということをいたすのじゃ。……このたわけ者。……とはいうものの、わしもそういうことは好きじゃ」「……あぁ、びっくりした。旦那もお好きでやすかいな」「しかし、隣家へは一応こたえねば相成らん。あぁ、その方、これから隣家へ行ってまいれ」「何と言うてまいります」「慌ただしゅう走り込んでな、不埒でござる、不埒でござる、ふらちふんみょう、ふらふったいでござる。ご当家様の筍が、わが家の庭に泥脛を踏ん込みました。戦国ならば間者も同様な奴、召し捕って手討ちにいたします故、この儀ちょっとお断りいたしますと、そう言うてこい。わしは鰹節のダシを取っておくから」「ははぁ、行てまいります。……おもろい旦那やな、うちの旦那は。走り込んでか……えー、不埒でござる、不埒でござる、ふらちふんみょう、ふらふったいでござる」「これは隣家の可内、慌ただしゅう何事じゃ」「ご当家様の筍が、手前どもの庭へ泥脛を踏ん込みました。戦国ならば間者も同様な奴。召し取って手討ちにいたしますので、この段ちょっとお断りをいたします」「ほほぅ……、不届き至極な筍め、……お手討ちはやむをえませんが、遺骸はこちらへお下げ渡しを願いたい、と、ご返事を」「さいならっ……。向こうの方が上手やで。……えー、行てまいりました」「あぁ、ご苦労。何とであったな」「それが、お手打ちはやむを得ませんが、死骸はこっちへ下げ渡してくれちゅうてまんねん」「左様か。……あぁ、もう一度行ってまいれ。えぇ、不届きな筍めは、すでに当家にて手討ちにいたしました。死骸は当方にて手厚く腹のうちへと葬ります。骨は明朝、高野(厠)に納まるでございましょう。これは筍の形見でございます、と言うて、この竹の皮を置いてまいれ」「ははぁ、おもろなってきたな、こら。……えぇー、お頼み申します」「おぉ、可内、どうした」「えー、不埒な筍は、もはや既に手討ちにいたしました。死骸は当方にて手厚く腹のうちへと葬ります。骨は明朝、高野へと納まるでございましょう。これは筍の形見でございます」「何っ、形見とな。もはやお手討ち相成ったか。……ははぁ、可愛いや。皮いやぁ」侍言葉と奴言葉で書きましたが、狂言のようで、なかなか素敵な一席だと思います。
一年ぶりに落語会を企画しました。詳しくはへ
2011.4.24
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