清八でございます。ごぶさたでございます。
私が30年来のMacフリークであることは、これまでに書かせていただきました。世間の一般常識とされてきたMicrosoft系ソフトを使わないようにして、最新情報社会を楽しんでおります。三ヶ月程前に、ネットサーフィン(これは、もう死語ですね)で、「食に命を懸ける会」のサイトを見つけました。東京農大の小泉武夫博士が世界中の食を食べ歩き、その上で、国内で伝統食を伝え、地産地消を探求し、食育を実践する者たち、そして生産者たちを集められた会でした。味噌、醤油、みりん、魚醤、かんずり、鰹ぶしなど本物を作り続けられている全国の職人さんとその会社が参加されています。このサイトの中に「近江の熟鮓(なれずし)」として余呉町の「徳山鮓」さんを見つけたのです。近江の熟鮓としては、琵琶湖の鮒ずしが有名です。ところが、この発酵食品は高級食品なのですが、お中元やお歳暮に贈ってもその強烈なクセにより食されなかったり、喜ばれなかったりというレベルの高い食品なのです。実は、私は日本酒の肴としては、これ以上のものは無いと思っている大好きな食品なのです。試みに、自宅へのお中元として阪神百貨店のサイトから頼んで食べて見ました。今まで食べた中では、もちろん一番、これまでの鮒ずしの味わいを変えてしまう程、インパクトがありました。これは、もう絶対に余呉町のお店まで行くしかないと決めました。ところが、7月14日、BS日テレの「スペシャリテ紀行 皿の上の物語」で全国に放送されてしまったのです。この番組では、3月17日に「三鞍の山荘・今井」さん、4月7日に「エピファニー」さんが紹介されましたので、ご覧になられている方も多いと思います。予約可能となるタイミングが全くわからなかったのですが、8月のお盆前に電話したところ、偶然キャンセルがあり、9月17日の昼席を確保できたのです。
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写真① |
さて、当日です。二つの台風による暴風雨が予測される日となってしまいました。新居町を8時11分発の下りで豊橋へ、特別快速に乗り換えて米原行きですが、やはり伊吹山からはバケツをひっくり返したような大雨になっていました。ところが、米原駅では雨もあがり
JR北陸本線・新快速に乗り換え余呉町(写真①)に着いた時には晴れ間も見えてくれました。余呉駅着は11時29分でした。お店までは約3キロ、徒歩で可能なのですが、まだ暑いからと女将さんの運転で迎えに来ていただけました。この余呉町は、近畿地方で唯一の豪雪地帯で、その雪解け水の効果もありこの湖は別名「鏡湖」と呼ばれ、賤ケ岳が見事に湖面に映るとの事でその写真を見せていただきました。また、丹後半島と三保の松原と同じように「羽衣伝説」が残されている土地です。
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写真② |
この素晴らしい湖が借景として見渡せる湖畔に建っているのが、「徳山鮓」さん(写真②)でした。店主の徳山さんは、京都の「河繁」で修行後、地元に戻り発酵食品の勉強をしながら、地元の国民宿舎余呉荘で働かれ、小泉武夫博士と出会ってから発酵工房をつくり、七年前に独立されたとのことです。昼席は5250円、8400円、10500円の三コースから、一泊二日コースは18900円からとなっていました。ご夫妻での経営ですので、宿泊は二組、昼席も三組限定ということでした。どおりで予約が難しいはずです。
三組のうち私たちが一番早く着いたらしく、8人掛けの大きな木のテーブルの窓際に席を
取っていただけました。まさに余呉湖を観ながらの宴席となりました。12時過ぎから料理が一品ずつ出てきました。その前に、当然、日本酒です。お任せでお願いすると、純米酒の地酒「紫霞の湖(しがのうみ)」(写真③)が出されました。長浜市木之本町の「富田酒造」さんの名酒です。一品目は、向かって左側が「びわ鱒の熟鮓」右側が「鯖の熟鮓」(写真④)です。最初から発酵食品が登場しました。鯖の上にかかっているのは、チーズとトマトソースです。鯖の熟れ具合にトマトソースの酸味がプラスされ、チーズで抑えてくれているため食べやすく、酒の肴としてもいい一品だと思いました。そして、二品目に「天然鰻の湯引き」(写真⑤)
が登場、鱧の落としのようで身がしまっていました。三品目には「天然鰻の白焼き」(写真⑥)
が一本焼きで登場してきたのです。もちろん半助(大阪弁で言われている鰻の頭です)から尾までありました。浜松の方にはお馴染みが無いようですが、関西では普通に半助を食べます。
落語のネタのようですが、鰻屋でお金が無いときは、蒲焼のたれだけの「たれ丼」、少しお金があったら、半助と尾だけの「半助丼」、もっとお金があったら普通の「鰻丼」という三パターンが許されるお店があったんです。この鰻は大振りではありませんが、皮目の焼きが絶品、身もきれいに焼かれていました。上にのっているのは山椒の実です。帰りに駐車場や畑を見ると山椒の木がたくさんありました。実山椒は実にいいです。おいしい食べ方にしてくれています。このお皿ですが、余呉湖の形になっていて女将さんの作陶の師匠の作品だということでした。
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写真⑦ |
四品目が何と「天然鰻の湯引き肝」(写真⑦)でした。私は子供の頃、家の裏に井戸があって天然鰻取りの漁師さんが井戸でさばいていて、よくその肝をいただいたものです。また浜名湖周辺での養鰻全盛時には、信じられないほどの量を食べておりました。新居町では、最近のように蒲焼ではなく、白焼きでわさび醤油やにんにく醤油で酒の肴としていただくことが多く、蒲焼でも白焼きでも湯引きでも経験してきましたから、浜松っ子の方々よりは鰻をどのように食するか、少しだけは理解できていると自負しております。本当に余計な事ですが、浜松っ子の方々、浜松市内の鰻関係者の方々、ぜひ、この鰻を食べてみて下さい。「目からうろこ」状態になって、もっと浜松鰻の活性化になると思います。
これから六品登場、別の日本酒も登場しますが、どんな料理なのか、どの金額コースなのか、公開は次回のお楽しみとさせていただきます。なお、次回の更新は早めに致します。