清八でございます。
「食欲の秋」になってきました。料亭やレストランで「美食会」とか「グルメ会」など開催されておりますが、当然のように各料理に合わせたアルコール類が提供されます。その料金が会費に含まれていようと、いまいと、アルコール類をお飲みになれない方は、その料理の味わいが半減されますので損だと思います。(飲めない方、ごめんなさい)私は、お酒というものが飲めない体質でして、嘘だと思われましたら、ここにごく上等の一升瓶を一本置かれて、好きなだけ飲んでもええ、と言われましても、そうですなぁ。一合がやっと入るようなグラスに一杯か二杯しか、よう残せん男でございます。…落語のマクラでは、このようにして、お酒の噺に入っていきます。
さて、ある男、お酒がすこしも飲めません。奈良漬のにおいをかいだだけでも酔っ払ってしまうというような男なのでございます。ところが、ある日のこと、ご近所から酒かすを二枚もらいました。これなら大丈夫だろうと、火であぶって、お砂糖をかけて食べますというと、ベロベロに酔っ払ってしまいました。さぁ、ふだん、友達仲間から「酒が飲めない」と馬鹿にされていましたので、これがチャンスと、パフォーマンスを考えました。
「松ちゃん、松ちゃん」「なんや」「わいの顔見て」「突然、何や」「赤いやろ」「風邪ひいたんか」「そや、ないがな。酒飲んだんや」「へぇ、お前が。どのくらい飲んだんや」「うん、このくらいのを二枚」「何」「こんな大きいのを二枚、飲んだ」「わかった、わかった。そら、酒かすを食べたんやろ」「わかるか」「わからいでか。みんなに自慢したいんなら、そや、こんな大きなドンブリで二杯飲んだ、と言うたら、みな、信用するで…」「おおきに、ありがとう。そんなら…と、竹やん、竹やん」「何や」「顔、赤いやろ」「あぁ、風邪ひいたんか」「そや、ないがな。酒飲んで酔っ払ってんねや」「へぇ、お前が。珍しいな。それで、どのくらい飲んだんや」「こんな大きいドンブリで二杯飲んだ」「そら、すごいやないか。それで、酒のあては、何や」「砂糖かけて食べた」「ははぁーん、そら、酒やなくて、酒かすや」「何で、わかった」「そら、わかるがな。そういう時はな、鯛の刺身で飲んだ。と、こない言いいんかいな」「おおきに、ありがとう。友達仲間というのんは、ありがたいもんやな。そんなら…と、梅やん、梅やん、顔、赤いやろ。そやけどな、風邪ひいてんのやないで。酒、飲んで、顔が赤くなってんのやで」「そうか、どうりで赤いはずや。どのぐらい飲んだんや」「うん、こんな大きなドンブリで二杯」「そら、すごいやないか。それで、酒のアテは?」「鯛の刺身や」「そら、すごいやないか。で、酒は燗付けか冷やか?」「うん、よ〜く、焼いて」
「酒のかす」という小咄ですが、うまくできてるでしょう。たくさん飲める人もたくさんお飲みになれない方も、楽しい時間と空間を共有したいものですね。忘年会、クリスマス、新年会、お楽しみはこれからです。
2004.11.12 |