「ちりとてちん」? 実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。 噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・
「酒田で最高の支那そばと、秋田で日本一の居酒屋を味わってきました」
清八でございます。ごぶさたしております。10月に東北に行ってきました。8日は鶴岡駅から酒田市への移動です。前回、書き忘れたのですが、鶴岡市の郷土資料館・大寶館には、本多猪四郎監督の展示コーナーがありました。そうです。昭和29年のゴジラから50年のメカゴジラの逆襲まで特撮映画を世に出された本多監督は、この鶴岡市のご出身だったのです。さて、「E653系特急いなほ号」内には、車内販売があって、雪国ドーナツとか、だだちゃ豆せんべいなど用意されていたのですが(画像①)、酒田市内での中華そばが味わえなくなるので遠慮しました。実は、酒田駅には「駅の弁当・庄内弁」(画像②)が限定個数で販売されていたのですが、こちらも断念しました。酒田駅構内の観光案内所でマップをいただき、本間美術館(画像③)と酒田市立資料館、本間家旧本邸への道を教えてもらいました。本間家とは、農地解放による解体までは日本最大の地主と称された豪商でした。江戸時代は東北の多くの大名家にお金を貸し、戊辰戦争では庄内藩の軍資金を用立て、維新後には薩長政府への賠償金も支払ったという歴史上の一族です。庄内藩の財政再建に尽力、宝暦の大飢饉後、豊作の時の米を庄内藩の米蔵に貯蔵し、飢饉の時に放出するプロジェクトを立ち上げ、何と昭和20年まで維持したというから、感謝しても非難する庄内人はいなかったという大人物でした。本間美術館にしても、単なる大金持ちの道楽ではなく、日本の美術・文化の鑑賞を通して日本人の誇りと自信を取り戻して欲しいとの切実な思いから公開されているということです。正に、地域貢献としては、メセナ(芸術文化支援活動)の域を遥かに超えている事業だと思いました。ここで現実に戻って、受付の女性に酒田市内の中華そば屋さんを教えていただけました。街中にある三日月軒(中町店)(画像④)です。昭和31年創業でメニューは中華そば(画像⑤、⑥)のみ、飛島のトビウオと豚ガラの出汁で、醤油のみ、自家製手打ち麺とのことで、いただきました。これは、もう完全に「支那そば」でした。本当においしかったです。観光客ではなくて、町内の人たちが三世代で通い続けているソウルフードです。鶴岡市でも酒田市でも東京資本のラーメン屋さんが進出して駐車場のある広い店を展開しているようですが、全く別物だと思います。高山市内の路地にある中華そば屋さんも観光客を呼び込んでいますが、地元の味一本でした。浜松市内でもいろいろな形態のラーメン屋さんがしのぎを削っているようですが、ラーメン屋ではなく、「中華そば屋」さんが出来て欲しいものです。ある情報によると、東京都内では来年から「支那そば屋」さんが広がっていくようです。トッピングの全部のせ、とか出汁づくりに38種類使って二昼夜の仕込みで、一杯1200円とかのラーメンはもういいです。シンプルな支那そば550円で提供して下さい。心から願っております。 このお店の中華そばを堪能して、酒田駅(画像⑦)に戻り、羽越本線で秋田市まで移動です。出発まで時間があったので、構内のお土産物屋・清川屋さんを覗いたら、イートインコーナーがあったので、だだちゃ豆の「だだっ子ソフト」をいただきました。今年2月仙台駅構内で購入した「だだちゃアイス」と同様、美味しかったです。ホームに出ると一番線ホームに、SL9632の主動輪がモニュメント(画像⑧、⑨)として展示してありました。もう本体は存在していませんが、1914年の製造だそうです。昨年6月、酒田駅百周年・陸羽西線100周年事業の一環だったとのことですが、そのまま展示が続けられているのは、鉄道ファンとしては嬉しいです。 秋田市では、かなりの雨天になっていたのですが、一カ月前に予約できた居酒屋さんへホテルからタクシーで向かいました。日本一の居酒屋と噂の「酒盃」(画像⑩)です。秋田県庁、秋田市役所の近くにありました。タクシーの運転手に酒盃と告げると、「よく予約できましたね」と返ってきました。ホームページに「カウンターでは、携帯・スマホ・タブレットの使用はできません」とありました。通されたのは、小座敷(画像⑪)だったのですが、とても撮影できる雰囲気ではなく、ご主人の思いに従い画像はありません。その代り、料理名を記憶している限り紹介します。先ずは、突出しとして箱に入った箱膳6品、「枝豆ピリ辛、煮凝り、にしんの燻製、いちじく味噌田楽、比内地鶏の燻製、自家豆腐の味噌漬け」、もうこれは日本酒をいただくしかないですわ。お刺身の四点盛り、「鯛の皮あぶり、かんぱち、水蛸」(もう、一点は聞き逃しました)、海老しんじょ、白子ポン酢、カニ餡茶碗蒸し、和牛のたたき、〆は、手打ちそば、そしてデザートでした。春霞、雪の茅舎、高清水、鳥海山……どれもこれも料理によくあっておいしかったです。今回は、予約時に、連休初日の土曜日で満席だから「おまかせ料理」(画像⑫)にして欲しいと言われて頼んだのですが、料理のみで5000円でした。後で調べたら4000円コースでは、比内地鶏の焼き物とかあるようです。これは絶対に再訪して、カウンターで一品料理を頼みたいと心に誓いました。私のこれまでの経験から、県庁とか市役所の裏通りには必ず永く続けられている名店があります。たぶん海外でもそうです。ソウル市役所の裏通りにも観光ガイドブックに掲載されていない名店がありました。例え、言葉が通じなくても現地の公務員のたまり場ですから安全・安心です。この「酒盃」のご主人は若い頃(40年前程)、京都・大阪で食体験をされ秋田に戻られて開業、この店名は京都で馴染みだったお店のお祖母ちゃんの命名だそうです。このエピソードが判って、京都の良い意味の一見さんお断りの居酒屋さんの雰囲気を思い出しました。遠州地区からは遠いです。遠いですが、欧米に行くよりは近いです。遠州地区でオーナーシェフとして営業されている居酒屋さんたち、このお店は絶対に行って味わって、雰囲気を体験してくるべき一店です。浜松市内に一店でもこのようなお店ができたら、街は変わりますよ。活気づきますよ。すばらしいカルチャーショックを体験してきて下さい。自己投資をして下さい。 翌日は、秋田空港行きのバス時間まで市内観光です。ホテルから徒歩10分のねぶり流し館で竿灯の実演を拝見(画像⑬)、旧・金子家住宅(画像⑭)、赤れんが郷土館(画像⑮)と廻りました。赤れんが郷土館は、旧秋田銀行本店本館で、木版画家の勝平得之さんの常設記念館が入っていました。勝野さんは、郷土秋田のめんこい秋田美人や雪の情景をみごとに木版に表現された名人です。秋田空港行きのリムジンバスに乗って空港に着いたのが離陸55分前、空港内のレストラン「杉のや」に飛び込んで、わっぱめしを注文、味わう時間もなく胃袋に入れ、25分前にチェックイン、滑り込みセーフでした。画像もありません。「杉のや」さん、ごめんなさいでした。 こうして、鶴岡、酒田、秋田から羽田空港に戻ってきました。翌日の天気予報では秋田は、10月10日からは冬の季節に入ったとのことでした。次は、雪の鶴岡、酒田、秋田の居酒屋での日本酒、本当に再訪したいです。長々とありがとうございました。
本間美術館 http://www.homma-museum.or.jp 勝平得之記念館 http://www.city.akita.jp/city/ed/ak/set_katuhira.htm 酒盃 http://www.syuhai.com/
2016.11.26 清八