「ちりとてちん」? 実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。 噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・
「念願のパン、昼酒を奨める居酒屋、そして宮澤賢治」
清八でございます。10月7日、8日、9日と、八戸、盛岡、花巻と廻ってきました。二日目の午後、13時42分、鮫駅からJR八戸線で八戸へ、東北新幹線に乗り換えて盛岡に、14時44分到着しました。タクシーでホテルに向かいました。後から調べたら、ホテルの近くまで周回バスがあったのですが、徒歩20分というアクセス案内をみて乗ってしまいました。盛岡駅の改札口を通った先に、お土産物屋さんがあるのですが、その近くにパンの空箱がありました。よ~く見ると、何と「福田パン」です。盛岡市のソウルフードが、福田パンなのですよ。今回の目的の一つ、本店に行って店内でパンを購入することでした。ただ、駅からも今夜のホテルからも徒歩20分、初めての土地で地理不案内です。それが駅の構内にあったのです。さっそく、ピーナッツバターパンを購入、ホテルの部屋で食しました。コッペパンに、いろいろな具材を挟んでいるだけですが、パンの生地そのものがおいしく、地元の学生さんたちにとっては、コンビニやファーストフードよりも有名です。部屋で休憩してから、今晩の居酒屋周辺を散策してみることにしました。ホテルから中央通りに出て、岩手県庁を目指しました。隣の盛岡地方裁判所前に「石割桜」(画像①)があるからです。花は咲いていませんが、巨大な岩を割って、樹齢300年の巨木に圧倒されました。市役所前を通り、中の橋を渡って、(画像②)岩手銀行赤レンガ館に向かいました。ところが、入館は午後4時30分まで、3分程過ぎていたので、お断りされました。仕方がないので、今晩の居酒屋の場所を確認するために、盛岡城址公園内にある桜山神社に向かいました。この神社は、盛岡藩の守護神社でした。この桜山さんの前に終戦後、新しく商店街がつくられたのですが、桜山商店街には個性的なお店があるのです。元祖じゃじゃ麺の「白龍」本店、元祖ア・ラ・モンタンの「モンタン」、12時~17時がランチメニューの「かまどのある家」などなど…。
さて、今夜の居酒屋さんです。店名が「酒をよぶ食卓」(画像③)なんです。このお店は、盛岡市内のタウン誌「てくり」のサイト内から見つけました。サイトの「店舗紹介」文が気に入りました。「酒をよぶ食卓の名のとおり、料理が酒を呼ぶ…。旬の食と、それに合わせた旬の酒を一緒に楽しんでいただきたい。そんなお店です。」私は、この紹介文で信用して、電話予約をさせていただきました。予約の18時30分の5分前に入店、カウンター席が確保されていました。目の前には、一升瓶の地酒が6本程置かれており、本日の食材、厨房内が殆ど見渡せました。メニューの表書きに、「~食は一番身近な娯楽です~」と書いてありました。これは絶対に信用できると感じました。とりあえず、「かるめの晩酌セット」1500円を二人分、生ビールサッポロtheパーフェクト生のジョッキ二杯を頼みました。小鉢の前菜三種と鰹の刺身(画像④)、牛煮込み(画像⑤)、蒸し野菜(画像⑥)、晩酌ならもうこれで十分ではないでしょうか。ビールがなくなったので、田酒を冷で一合、追加の肴として、フロマージュドレッシング野菜(画像⑦)、白子焼き(画像⑧)、メンチカツ(画像⑨)、しょっつる仕立ての玉子焼き(画像⑩)を頼みました。途中、地酒をもう一合、温燗でいただき、さらにもう一合でした。締めは、塩むすびと味噌汁(画像⑪)、もう大満足でした。この塩むすびは、農薬を一切使わない合鴨農法で育てられた滝沢村大釜の熱血農業士・武田哲さんのお米をかまどで炊いています。これは頼んでから気づいたのですが、このお店では、コース料理も単品料理も一人分ずつの皿で提供されます。大皿では、取り分けたり、手を伸ばしたり、遠慮したり、結局、一品食べれなかった、という結末にならないご配慮とのことでした。板前さんもお運びさんも、お客さんの食べ呑むペースに合わせて、配膳し、空いた皿・徳利・盃・グラスを下げるという全く当たり前の行動に、感動すら覚えてしまいました。実は、このお店、12時から17時までは、「かまどのある家」という定食屋さん、17時から夜メニューとなって「酒をよぶ食卓」と看板を変える店なのです。しかも、定食屋の時間帯でも15時から昼呑みOKというシステムなんです。このランチメニューがまた素晴らしいようです。「牡蠣の土手焼き定食」「メンチカツ定食」「肉じゃがコロッケ定食」「ポークチャップ定食」「焼き魚定食」「シーフードホワイトカレー定食」などなど…、これは酒の肴になりますよね。この盛岡市は県庁所在地で官公庁の街なので、平日の昼から酒を飲むという土地ではなかったのですが、東北新幹線開通により観光客が増加、飲食店として様々な展開をするようになったということでした。
さて、三日目9日です。朝食は、ホテルの和洋バイキングでしたが、三陸産のイクラ、ホヤ、ウニ、ひっつみ、も用意されていて満足でした。朝食後、チェックアウト時間まで、岩手公園、城址跡を散歩、もりおか歴史文化館(画像⑫)で盛岡藩と南部家の歴史を勉強、昨晩、入れなかった岩手銀行赤レンガ館(画像⑬、画像⑭)に入館しました。この館の近くには明治時代から消防番屋(画像⑮)が改修されて保存されていて、なかなか風情のある街並みとなっていました。赤レンガ館は入館時間直後だった為か、ご案内の責任者さんに、いろいろと教えていただけました。東京駅の設計者、辰野金吾と盛岡出身の弟子、葛西萬司による設計で、1911年の落成、2012年月までは岩手銀行中ノ橋支店として使われ、2016年から公開施設と変身、多目的ホールとして貸し出されているそうです。チェックアウト後、盛岡駅までは周回バスに乗れました。本日のランチは、駅構内の福田パンさんにしました。スパゲティミートソース、ポテトサラダ、(画像⑯)いろいろと買い込んで待合室で食べました。他のお客さんたちも同じように食していました。本当に岩手のソウルフードなんですね。今回の旅の最後の目的地は花巻の宮澤賢治記念館(画像⑰)です。新花巻駅から徒歩25分なので、タクシー乗車しました。短い時間でしたが、銀河鉄道のモデルになった岩手軽便鉄道の写真も見ることができました。もう地面は朝晩の露で滑りやすくなっていた為か、賢治の花壇・森(画像⑱)には誰も居なかったので賢治の世界を堪能できました。
わずか三日間でしたが、いゃあ、美味しがった、楽しがった。ありがどごじゃした。
追伸 今回も読んでいただいた方に、私の情報源からプレゼントです。 初めての土地で飲食店、しかも居酒屋さんを探す時、今でこそネット情報がありますが、20年前は無かったんです。私の独断と偏見ですが、日本全国、必ず市町村役場、県庁の周辺、特に裏手に名物店、安心で良心的なお店があります。何しろ、地方公務員、国家公務員さんが毎日のように使ってくれている店ですから、世界中は知りませんが、ソウル、ブリュッセルでは正解なお店がありました。国内は、間違い無いと思います。
故・井上ひさし氏の戯曲「イーハトーボの劇列車」のセリフです。「わたしたちはホテルのりっぱな料理店へ行かないでも、きれいにすきとおった風をたべることができます。コカコーラの自動販売機なぞなくとも、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます」
宮沢賢治イーハトーブ館を見学していて、思い出しました。
酒をよぶ食卓 http://www.mass-entame.jp/ 岩手銀行赤レンガ館 http://www.iwagin-akarengakan.jp/ 福田パン fukuda-pan.com 宮沢賢治記念館 http://www.miyazawa-kenji.com/kinenkan.html
2017.11.5 清八