「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「高級野菜から、とろ鯖の話になりました」

 清八でございます。ごぶさたしました。
 京都に行ってきました。それも2月6~7日です。3日でしたら、節分で吉田神社、八坂神社、伏見稲荷大社、平安神宮などなど、多くの神社で一年に一度の節分会・豆まきが行われておりました。11日やったら、初午ですから京洛の初春の最大の祭事が伏見稲荷大社で行われ、福詣りができたのです。実は、日中が最高気温7度、夜は氷点下というこのシーズン、ホテルの宿泊料金が底値になるのです。やはり観光の京都ですわ。京都駅ビル内の99店舗が参加しての「グルメフェア2015食べる人には福来たる」イベントを2月中展開されておりました。また、京都市として農林水産省の「和食道」との共同開催で、市内のレストラン・料亭・割烹など151店が参加しての「京都レストランウインタースペシャル」も同時に展開されておりました。岡崎つる家、懐石近又、祇園にしむら、下鴨茶寮、たん熊、瓢亭別館、萬亀楼、天壇、イルギットオーネ、レストラン田むら、三嶋亭、ぐりる金星……(省略して失礼致します)とにかく、いくらお金と休みがあったら体験できんのや、というレベルで行われていたのです。ここで、現実に戻りまして…。
 先ずは、ホテルへチェックインして三条の六角堂の近くへ歩きました。京都・八百一さんが2013年4月にオープンされた八百屋さんの商業施設「京都八百一本館」(画像①)を見学に行きました。浜松でも駅南で、ビオ・あつみさんが高級野菜を品揃えされてますが、この本館では三階屋上に「六角農場」を設け、素材の「見える化」を実現させた店舗でした。二階と三階に、和食とフレンチレストラン、ワインの立ち飲みコーナーもあって、いろいろな素材の組み合わせを共有できる空間づくりをしているようでした。この屋上農場は、西日本のデパ地下には殆ど出店されている八百一さんの社員教育の一環なのだそうです。八百屋で働いている人間に直接、野菜の成り立ち、育て方を体験させているとのことでした。このお店では、昨年12月から自家製蒸しまんじゅうを販売されていましたので、「野菜まん・豚まん・あんまん」(画像②)の三種類を購入、ホテルに戻って試食してみました。小ぶりですがお値段も安く、あっさりした味わいで、おやつにぴったりでした。
 夜は、もうお馴染みの吉田屋料理店さん(画像③)へ向かいました。今回で四回目になりました。25年以上、拙宅で続けている「わいわいワイン会」のワインの肴を考える際、このお店のメニューが先ず浮かんでくる程、大好きなお店の一つになっているのです。このお店のオーナーシェフである吉田裕子さんは、京都市立芸術大学大学院ご出身のジュエリーデザイナーで、このお店は2000年9月から始められました。「ちりとてちん・その132」でご紹介したのですが、一昨年5月に岡山県新庄村(人口1000人、65歳以上400人)の村ゼミで講演をされております。その村での講演録が手元にあるのですが、京都の人間がやる料理屋というと「おばんざい」というイメージかもしれないが、それは違うと、最初から思っていた。「おばんざい」は普段食べているもの。それだったら家で食べればいいだけの話なので。自分の店は、友人や周りの人達に来てほしかった。「現代のおばんざい」というか、地元で普段と違うエスニックとかを食べに来てもらう感じから、こうなった。と、言われています。この夜は、赤ワインをボトルで頼んでから、「近江かぶのピクルス」(画像④)「菜の花とタコの炒め物」(画像⑤)「春野菜のフリット盛合せ」(画像⑥)「チーズ4種盛」(画像⑦)「九条葱のチヂミ」(画像⑧)「大きなしめじの炒め物」(画像⑨)そして、締めの「ピータンと塩豚のお粥」(画像⑩)、途中でワインをデキャンタで追加しました。ご本人が料理本の中でも書かれている「世界の家庭料理店」なのだとご理解いただけますでしょうか。

画像① 画像② 画像③ 画像④
画像⑤ 画像⑥ 画像⑦ 画像⑧

 翌朝は、ホテルの朝食ではなく、近くの伊右衛門サロン(画像⑪)のモーニングにしてみました。京都吉兆嵐山の徳岡総料理長監修の朝ごはんがいただけるからです。かまど炊きご飯にお味噌汁とお漬物、お魚のオーブン焼き、祇園なかきのおぼろ豆腐に小鉢がついての1026円(画像⑫)でした。また、薩摩赤玉と海苔、特製醤油の玉子かけご飯615円(画像⑬)に祇園なかきのおあげと京水名菜のさっと煮291円を加えていただきました。朝、ホテルから少し散歩しての朝ごはん、便利になったものです。
 ホテルに戻り、ゆっくりのチェックアウト後、近くの京都伝統工芸館(画像⑭)に立ち寄るのが最近のパターンになりました。この工芸館では、京都伝統工芸大学の学生さんたちによる実演が毎日行われており、この日は木彫刻と陶芸絵付、そして竹工芸の三種でしたが、いずれも若い女性でした。この学生さんたちの中から将来、日展の常連さんや海外で受賞される作家さんたちが生まれるのだと想像すると、楽しさが込み上げてくるものです。次は、大和大路通りの恵美須神社をお詣りです。大阪・今宮戎神社、西宮神社と並んで日本三大えびす神社の一つで、「京のえべっさん」です。毎年1月8日から12日までは、「十日えびす」で賑わいますが、もう2月、境内(画像⑮)は閑散としておりました。実は、この、えびす神社へのお詣りは初めてでした。ここのえべっさんは、本殿の向かって左に廻ったところに戸があって、その中においでやそうです。何でも、恵比須さまは耳がご不自由なので、先ず正面の本殿でお詣りして、左側の横の木戸(画像⑯)を軽くたたいてからお願い事をしないと伝わらへん、ということでした。次は、お寺です。せっかく近くで非公開文化財特別公開されていたので、六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)に入りました。お盆の精霊迎え「六道まいり」で知られる平安時代創建の古刹です。閻魔堂には閻魔大王像と小野篁像が安置され、冥途への行き来に使ったとされている「冥途通いの井戸」「黄泉がえりの井戸」もありました。今回の特別公開は10世紀頃の作と判明した「毘沙門天像」や地獄絵「熊野観心十界図」でした。

画像⑨ 画像⑩ 画像⑪ 画像⑫
画像⑬ 画像⑭ 画像⑮ 画像⑯

 さて、今回の三番目の目的であるランチのお店を探しました。昨年1月、大阪の「株式会社鯖や」さんが「まだ出逢ったことのないとろさばとの出逢いの場」をコンセプトに、とろさば料理専門店「SABAR」を大阪・福島区にオープンさせました。そして7月には、大阪・天満店、12月に京都烏丸へ三号店(画像⑰)を進出させたのです。しかも、ランチは1月13日からだったので、ちょうどいいタイミングでした。このお店も町屋を改造しての営業で、ランチは6種類(画像⑱)でした。そこで、定番の「究極のとろさば塩焼き定食」(画像⑲)と、なんと「とろさばグリーンカレー」(画像⑳)をビールと共に頼みました。塩焼きの鯖は30㎝位あり、食べきれない場合、持ち帰り可能なのだそうです。グリーンカレーは本格的なタイカレーで、仲居さんが「本当に辛いんですけど……、頼まはりますか?」と何べんも言うてましたけど、本当に辛かったです。ビール頼んどいて、よかったですわ。そうそう、この店のトイレですけど、女性用は「お姫サバ」、男性用は「お殿サバ」と洒落ておりました。しめ鯖、鯖の棒寿司、塩焼きなど鯖大好き人間の私にとっては、また、通いたいお店が増えてしまいましたな。

画像⑰ 画像⑱ 画像⑲ 画像⑳
     
画像(21)      

 ランチ後は、南禅寺に向かい、ガイドブックにも載っていない別荘を外から見学させていただきました。お正月のNHKで「京都・南禅寺界隈 山紫水明のユートピア」で別荘の中にテレビカメラが入って放映されていたのです。明治から大正時代の政財界の頂点を極めた方々が富を注ぎ込んで作り上げた、正に、お屋敷でした。玄関の表札から、「對龍山荘」「碧雲荘」「何有荘」「有芳園」「流響院」「清流亭」「無燐庵」「真々庵」「洛翠」などが読み取れましたが、正式には何とお読みしたらいいのかは、わかりませんでした。別荘の角々に最新鋭の監視カメラが設置されておりましたので、写真撮影もご遠慮しました。通りの形のみ(画像21)ご紹介します。機会があったら一生に一度でも中を観たいものです。
こうして二日で歩数4万4千歩の小旅行は終わりました。足も胃も、お疲れさまでした。

 吉田屋料理店  http://www.kyoto-yoshidaya.jp/
 八百一本館   http://www.kyotoyaoichihonkan.com/
 SABAR   http://sabar38.com/

2015.2.17 清八


38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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